副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「はー、一気に気がラクになったぁ」

「緊張してたの?」

「してたよ、もちろん!」


強い口調で言うと、海都くんはクスッと笑ってカップに口をつける。


「りらさん、こういう時はあんまり顔に出ないんだね。普段は動揺してるとすぐわかるのに」


そう言われて、確かにそうかもしれないと思った。ちょっとしたことで挙動不審になるくせに、撮影やさっきのような人前に出る時は、案外落ち着いて振る舞えるから。


「意外とモデルの仕事の時はそうかも。なんか振り切れるっていうか」

「意識が高いってことだよ、きっと。やっぱりモデルは天職なのかもね」


海都くんにそんなふうに言ってもらえると嬉しくて、私ははにかみながら両手で挟んだカップを見つめた。

手を温めつつひと息ついていると、海都くんがコートのポケットからおもむろに何かを取り出す。


「じゃあ頑張ったりらさんに、ご褒美あげる」


テーブルの上で差し出されたものは、白いラッピングにピンク色のリボンが巻かれた四角い箱。


「えっ、これ……?」

「開けてみて」


頬杖をついて微笑む彼に促され、私は戸惑いながらもリボンに手をかける。

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