副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「あの、本当にありがとう。でもほら、ここ日本だし……」

「細かいことは気にしないの。俺があげたかっただけだから、気にせずもらってよ。もちろんお返しなんていらないから」


やんわり断ろうとしてみたものの、無邪気な彼に押し切られそうになる。

でも、ここはちゃんとしておかないとダメだ。私には、ほかに好きな人がいるんだから。

申し訳ないけれどきっちりお断りしようと、姿勢を正して海都くんをまっすぐ見据える。


「ね、海都くん。気持ちは本当に嬉しいんだけど、やっぱり受け取れない。……私、今日チョコをあげようと思ってる人がいるの」


罪悪感と恥ずかしさで、次第に目線を落としてしまう私に、少しの間を置いて、海都くんはこんなひと言を口にした。


「それ、副社長でしょ」


見事に言い当てられてぱっと顔を上げると、笑みは消えているけれど平静を保ったままの彼がいる。

それとは反対に、動揺で目を見開き、口をパクパクさせる私。


「なっ、なんで……!?」

「こう見えて俺も人脈持ってるからさ、いろんな話が耳に入ってくるんだよ。熱愛疑惑の噂とか」


いたって普通の口調の彼の話に納得しつつ、そこまで噂が流れていたことに驚いてしまった。

私が否定しないことからも、彼は当たりだと悟ったようだけれど、探るような目でこちらを見てくる。

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