副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「さっき副社長が言ってたのも、りらさんのことじゃない?」


ギクリとするけれど、私も朔也さんの本心はわからない。ぎこちなく笑い、「さぁ、どうかな」と曖昧に返しておいた。

それでも、海都くんはすでに確信している様子だ。椅子の背もたれに背中を預けた彼は、どこか冷たく感じる笑みを浮かべて言い放つ。


「さすが副社長、りらさんを使ってまで話題作りするなんてね。やることが違うな」


その発言が引っかかり、私の顔からも笑みが消える。


「話題、作り……?」


私を使って、ってどういうこと? いまいち海都くんが言っている意味がわからないけれど、穏やかではないことはわかる。

表情を強張らせる私に、「そう」と頷いた彼は、足を組んで淡々と話し出した。


「香水を売るための、話題作り。業界内で有名な副社長がさっきみたいにプライベートな話をしたら、皆食いつくのは目に見えてるじゃん? りらさんとの噂も流しておけば、さらに効果的だし」


……海都くんの言葉のひとつひとつが、冷たい雫みたいに胸に落ちてきて、心の温度が下がっていく。

なんの言葉も出せずにいると、彼は追い打ちをかけるように、聞きたくはないひと言を口にする。


「つまり、りらさんと仲良くしてたのは、全部商売のため……なんじゃないかな」

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