副社長とふたり暮らし=愛育される日々
午後九時すぎ、夕食もお風呂も終えた私は、テレビもつけずにひとりリビングのソファに座っていた。
目の前のローテーブルに置いた、朔也さんに渡す予定だったチョコレートの箱をぼんやり見つめ、ひとりごちる。
「どうしよう、これ……」
捨てるのはもったいないし、自分で食べちゃおうかな。
でも、冷静になって考えてみれば、海都くんの話が本当だという確証はないのだ。ただ彼が、朔也さんを敵対してデタラメを言っただけなのかもしれない。
朔也さんを信じたい気持ちと、疑う気持ちが入り混じって、ものすごくもどかしい。
「あーもう、どうしたら……!」
「ただいま」
両手で髪をくしゃくしゃにしながら頭を抱えていた時、ドアを開く音とともに声がして、バッと顔を上げた。
やばっ、もう帰ってきた! もっと遅くなるかと思っていたのに。
振り向けば、朔也さんは紙袋とビジネスバッグをダイニングの椅子に置いている。私は出しっぱなしのチョコレートをどうしようかとあたふたする。
「さっ、朔也さん! おおお帰りなさい!」
「髪ボサボサだぞ。何やってたんだ」
怪訝そうな顔をしてコートを脱いだ彼は、ネクタイを緩めながらこちらに近づいてきた。そして、当たり前のように私の頭を撫でる。