副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「今日はお疲れ。よかったよ、りらの挨拶」


優しい声と微笑みに、胸がきゅうっと締めつけられる。

やっぱり信じたくない。私に向けられる彼のすべてが、仕事のためだなんて……。

胸の苦しさを感じつつも、私はいつも通りの笑顔を心がけて、「ありがとうございます」とお礼を言った。

テーブルのほうに目線を向けた彼は、赤い箱に気づいてキョトンとする。


「それは?」

「あー、っと、これはですね……!」


戸惑うけれど、もうバレてしまったものは仕方ない。告白は延期にするとしても、せっかく作ったチョコレートだから、これは渡してしまおう。

そう決めて、私は箱を手に取り、朔也さんに差し出す。


「朔也さんにあげようと思って作ったんです、生チョコ」

「手作りなのか、すごいな」


彼は嬉しそうな笑みを浮かべて、受け取ってくれた。

私の隣に座り、さっそくラッピングを開け始める彼だけど、きっと私以外の女子からももらっているんだろうな、とふと思う。

さっき持って帰ってきた紙袋の中には、たくさんのチョコレートが入っているのかも……。そう考えると、胸がチクチクする。

それなのに、私の口は勝手に動いてしまうのだ。


「会社の女の子からも、いっぱいもらいましたよね?」

「まぁもらったけど、全部義理だよ」

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