副社長とふたり暮らし=愛育される日々
今の“味見”というのは、まさか……“チョコレート味のキスを試してみる?”という意味?

心臓の動きが急に速くなり、目を見開いたまま硬直してしまう。

そんな私に、ゆっくりと綺麗な顔を近づける朔也さんは、あと十センチというところでぴたりと動きを止めた。


「拒否しないと、本当にするぞ」


わずかに苦笑を漏らす彼を見て、心の奥から熱い何かが込み上げてくる。

拒否なんてしたくない。だって、好きだから。あなたも、私のことが好きだからこんなふうにするんだ、って思いたいよ。

あなたの愛が本物だと、私にわからせてほしい。


「……教えてください。愛のある、キス」


切なさを隠しきれない瞳で彼を見つめ、私はそう口にしていた。

驚いたように目を見開いた朔也さんは、徐々に真剣な表情になっていく。瞳には、妖艶な色を濃くして。


「いくらでも教えてやる」


そう紡いだ彼の手は私の髪に差し込まれ、後頭部を支えると、流れるような動作で唇を重ねられた。

優しく触れたそれが一度離され、今度は深く、濃密に。舌を絡め取られて、チョコレートだけじゃない、感じたことのない甘さが全身を麻痺させる。


……あぁ、好きだ。もう引き返せないくらい、あなたのことが。

以前はわからなかった“好き”という感情が、どんどん流れ込んでくる。

この甘美なくちづけに愛がないとしたら、私は何を信じればいいのだろう──。




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