副社長とふたり暮らし=愛育される日々

知らない彼の姿=パンドラの箱



結局、朔也さんに想いを伝えることも、本当の気持ちを聞くこともできないまま、早くも一週間が経ってしまった。

発表会が終わっても、朔也さんは忙しそうにしている。それでも、夜は相変わらず一緒のベッドで寝ているから、話す時間がないわけではない。

ただ、例の話を切り出したら、心地良い彼のそばに寄り添っていられなくなるかもしれない。そう思うと、怖いから。


発表会以来悩みっぱなしで、ふくろうで仕事中の今も考えてしまう。

無意識に小さなため息をつきながら野菜を切っていると、隣のシンクで人参の皮をむく芳江さんが、手を休めずに声をかけてくれる。


「瑞香ちゃん、最近なんか元気ないけど大丈夫?」


芳江さん、気づいていたんだ……。

恋の病だけでなく、ここのところ、休みといえばユーフォリックモード本社に出向いていたから、単純に疲れているのもある。

けれど、たいしたことはないから、心配かけさせないよう、私は笑って首を横に振った。


「そんなことないですよ。芳江さんこそ、最近ジェントルの話が出ないけど大丈夫ですか?」

「そうなのよねー、ここ二ヶ月くらいぱったり来なくなっちゃって……。もう私らの女性ホルモン枯れてきちゃったわよ」


何気なく話を逸らすと、芳江さんは残念そうにしゅんとした。

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