副社長とふたり暮らし=愛育される日々
イケメン紳士の彼が現れないことで、芳江さんだけでなくおばちゃんたち皆が寂しがっているのだ。

ジェントルロスは案外大きいなぁ、と思いながら苦笑していると、芳江さんは手際良くピーラーを動かしつつ独り言のように言う。


「ピンク色のものでも身につけようかしら」

「ピンク色?」

「よく言うじゃない。風水とかパワーストーンとか、ピンク色は恋愛運が上がるって」

「恋愛運上げてどうするんですか」


人妻で母親のあなたが何を言う、と冗談だとわかっていながらも真面目につっこんでしまった。

おかしそうに笑う芳江さんを見ながら、そういえば海都くんがくれたピアスにも、パワーストーンがついているんだっけ、とふと思い出す。

あのピアスは、結局返すことができなくて受け取ってしまい、私の衣服が入ったバッグの中にしまってある。せっかくだけど、やっぱりつけられないし……。


 *


「つければいいじゃん。もったいない」


久々の二連休の初日、カフェでパンケーキをお供に私の話を聞いていた七恵が、あっけらかんと言った。

彼女が食べる生クリームとフルーツがこんもりと乗ったパンケーキの横には、例のピアスが置いてある。七恵に『見せて』と頼まれて持ってきたのだ。

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