副社長とふたり暮らし=愛育される日々
暖色の小さな石とメタリックフラワーが輝くそれをつまみ上げ、七恵はじっくり観察している。


「これ、普通に可愛いし。さすが宝生海都、センスあるよね」

「そうだけど、好きな人がいるのに別の人からもらったものつけるのって、なんか……」

「物に罪はないからいいんじゃないの、気にしなくて」


煮え切らない私に、七恵はあっさりと言い、ピアスを手にしたままなぜか席を立つ。そして隣に来ると、この間海都くんがしたのと同じように、私の耳にピアスをつけた。


「ほら、素敵。オシャレすると気分が上がるでしょ。もう暗い顔しないでよ」


見上げた先にいる彼女は、にこりと笑って私の肩をぽんぽん叩いた。

たしかに、いい服を着たり、メイクがうまくいったりすると、ちょっとだけ気分が良くなる。

朔也さんに恋をしてから、前はどうでもよかった外見にも気を配らなきゃと思うようになって、私なりに気を遣ってみたりしているのだ。

恋をするとこんなに変わるものなんだ、とつくづく実感している。

耳元で揺れるピアスは本当に可愛いし、相手は七恵だし、今日はつけていてもいいか。そう思い、彼女に微笑み返してパンケーキにフォークを刺した。

向かいの席に戻った七恵も、再びフォークを手にして話を戻す。


「副社長が話題作りのためだけに同居までするわけないじゃない。ほかに怪しいこともないんだし。本当に好きなのよ、瑞香のこと」

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