副社長とふたり暮らし=愛育される日々
自信たっぷりな様子できっぱりと言い放った七恵は、「惑わせやがって、宝生海都め」と、憎々しそうに呟いてフォークをグサッと刺した。……怖っ。

私はカップに手を伸ばし、今の状況のように白黒つかないカフェラテに目線を落とす。


「私もそう思うし、信じたいんだけど……でも、疑う気持ちがどうしても消えなくって」


七恵の言う通り、朔也さんを信じる理由はいくつもある。なのに疑ってしまうのは、自分に自信がないからだ。

私みたいな女を、彼ほどの人が愛するはずがないと思っているから。

いまだに劣等感を抱いている自分に嫌気がさして、また暗い顔をしてしまう私に、七恵は淡々と食べながら言う。


「じゃあもう、本人に直接聞くしかないね」

「その自信もない……」

「ヘタレ」


ズバッとつっこまれ、心臓に一撃をくらった私はカクリとうなだれた。

七恵は仕方ないなぁと言うように、クスクスと笑う。


「まぁ、悩むのも当然か。これが瑞香の遅すぎる初恋なんだもんね。こうやって、“私のこと好きなの? どうなの!?”って悶々とするのが恋愛の醍醐味なのよ。多いに悩みなさい」

「さすが七恵様……悟りを開いていらっしゃる」


達観した彼女をつい拝みそうになりつつ、恋愛は楽しいだけじゃないんだなと、私はひしひしと感じていた。


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