副社長とふたり暮らし=愛育される日々

七恵とたっぷりガールズトークをして、帰る頃にはすっかり日が暮れていた。最後も励ましてくれた彼女と別れ、マンションに向かう。

朔也さん、今夜は外で食べて来るから夕飯はいらないと言っていたっけ。私もパンケーキがお腹に溜まっているから、夕飯は軽くしよう。

そんなことを考えながら、新宿駅の通りに差しかかった、その時。前方から歩いて来る人を見て、私は目を丸くした。


「……朔也さん?」


スーツの上に羽織った黒いコート、ふわりとしたダークブラウンのショートヘア、男の色気を漂わせる甘めの顔立ち。

間違いなく朔也さんだ。遠目でもわかる。

このあたりでこれから会食でもあるのかな。話す時間はなくても、偶然会えるなんてちょっとラッキーだ。

口元を緩ませ、心が弾むのを感じながら、ひと言だけでも話しかけようと、彼に向かって歩き出す。


しかし、彼ひとりで歩いているのではないことに気づき、すぐに足を止めた。

朔也さんの隣には、見知った顔の女性が腕を絡めて寄り添っている。ワンレングスのボブに、クールな印象の美人さん。……三嶋さんだ。

そのツーショットを目の当たりにした瞬間、胸に切り裂かれるような痛みと衝撃が走る。

どうして、ふたりが……? 食事をする相手って、三嶋さんだったの?

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