副社長とふたり暮らし=愛育される日々
このまま何も聞かずにはいられない。

身体を前屈みにして明智さんに懇願すると、彼はためらいながらも口を開いた。


「アメリカで事業を始めることが決まって、副社長がリーダーとなって販促活動を行う予定なんです。契約を取って、それが起動に乗るまで、少なくとも一年はいることになるかと」

「一年……!?」


その事実が、ずしりと重くのしかかる。

そんなに大事なことを、どうして話してくれないの? 三嶋さんは知っているのに、なんで私には……。

内緒にされていたことも、しばらく会えなくなることも。いろいろなことがショックで、涙が出そうになる。


「副社長にも何か理由があって、まだ内密にしているのだと思います。いずれ必ずお話しなければいけないことですから」


ぎゅっと唇を噛んで堪える私を察してか、明智さんは気遣うような優しい声をかけてくれた。

朔也さんが私に話さない理由。それを考えると、どうしても悪いことしか思い浮かばなくて、気持ちは沈む一方だった。


ほどなくしてマンションに着き、静かに車が停まる。降りる前に、なんとなく明智さんに問いかけてみた。


「明智さんはどうするんですか? 一緒にアメリカに?」


ミラーに映る彼は、私を見ていつもと同じ調子で答える。

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