副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「私はここに残ります。副社長の業務を専務が兼任するので、そのサポートをします」

「そうですか……。寂しい、ですよね」


自分の気持ちと、副社長を慕っているであろう明智さんの気持ちを勝手に重ね合わせてしまい、ぽつりと呟いた。

彼はふっと切なげな笑みを漏らし、「えぇ」と頷く。


「私の代わりに、もふにゃんを連れていってもらいます」


かっ、可愛い。

ちょっと乙女なことを言い出す明智さんに、吹き出してしまいそうになるのを必死で堪える。

でも、そっか。もふにゃんは連れていってもらえるんだ。いいなぁ……。


「もふにゃんはいいですね。カップルでいるから、寂しくないだろうし」


ぬいぐるみまでも妬ましく思ってしまう自分は重症だと思いつつ、ため息混じりに独り言をこぼした。

すると、明智さんがこちらを振り返り、神妙な顔でこんなことを言う。


「副社長、ペアで持っているんですか? 私があげたのは青い首輪をつけた一匹だけですが」

「えっ?」


あのぬいぐるみ、ふたつとも明智さんがあげたんじゃなかったの? ということは、ほかにプレゼントした人がいるってこと、だよね。

真っ先に思い浮かぶのは、やっぱり三嶋さんだ。あれだけ親密なのだから、朔也さんが猫好きということも知っているはず。

< 207 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop