副社長とふたり暮らし=愛育される日々
なっ、何!? 何事!?

わけがわからず洗い場にへたり込む私に、バサッとタオルがかけられ、正面から焦ったような様子の朔也さんが覗き込む。


「おい、大丈夫か!?」

「へ……さ、くや、さん?」


目を白黒させている間にも、彼は私の背中と膝の裏に手を回し、なぜか抱き上げられてしまった。

「え? えっ!?」と戸惑いの声を上げる私を、軽々とお姫様抱っこする彼は、そのまま寝室に入る。静かにベッドに私を下ろすと、また心配そうに見つめてくる。


「大丈夫か?」

「あ、はい。すみません、私寝ちゃってたみたいで……」


呆気に取られつつケロッとして答える私に、朔也さんは大きく息を吐き出して脱力した。


「なんだ、焦った……。いくら声かけても返事なくて、様子見てみたら死んだようにぐったりしてたから」

「あぁっ、すすすみません!」


帰ってきた彼が異変に気づき、慌てて助けようとしてくれたのだと理解して、私は大反省した。浴槽にだらりともたれて寝ていたら、そりゃびっくりするよね……。

おそらく十分も経っていないと思うのだけど、お風呂で寝てしまったのは初めてだ。疲れが一気に出たのかな。

朔也さんは怒ったり呆れたりするでもなく、安心したような表情で私の頬に手をあてる。

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