副社長とふたり暮らし=愛育される日々
●Love nest4●
兄の説得=自分を信じること
朔也さんと言い合ってしまった翌日、彼は早くに出社したようで、私が目覚めた時にはすでにいなかった。
ダイニングテーブルの上には、受け取るのを忘れてしまったピアスと、“昨日はごめん。瑞香の気持ちが落ち着いたら話をさせてくれ”というひと言が書かれたメモが置いてあった。
綺麗な字とメタリックの花を見ると、泣き腫らした目がまた痛くなってくる。
今の私には、まだしっかりと話を聞くことも、朔也さんと一緒に暮らすこともできなさそうで……。
彼のメッセージの下に、“すみません。少し頭を冷やしてきます”と書き、居候生活を始めた時の荷物を持ってマンションを出た。
ふくろうがタイミング良く休みでよかったな。
電車に揺られて久々の実家に帰ると、庭に咲き始めた沈丁花を眺めたり、お兄ちゃんが帰ったら一緒に食べるためのごちそうを作ったりして、のんびりと過ごした。
帰宅したお兄ちゃんは、私がいることに心底驚いて、何があったのかと心配していて。
『朔也さんに何されたんだ? 泣かされたのか!? あの男……ニューハーフに食わせてやる!』
と、すごい形相でお怒りになっていたけど、私の様子がおかしいことに気づくと、それ以上は踏み込まずにそっとしておいてくれた。