副社長とふたり暮らし=愛育される日々
以前と同じように兄妹ふたりの生活を再開して、あっという間に五日が経った。

朔也さんから何度か着信があったものの、出ることはためらわれて、結局避けてしまっている。

いまだになんの行動も起こす気にならず、休日の今日も縁側でひなたぼっこしている私に、電話の向こうで七恵が説得してくる。


『いい加減、副社長と話したほうがいいって。あんまり拒否してると本当に呆れられちゃうよ?』


半ば怒っているような口調の彼女が言う通り、朔也さんの話を聞かなければいけないことはわかっている。きっと、すでに呆れられているだろうということも。

でも、重い腰は一向に上がらない。


「もう、このまま自然消滅でいいのかも……。いずれアメリカ行っちゃうんだもん、遅かれ早かれお別れしなきゃいけないんだから」


力なく言いながら悲しくなって、大きなため息をついた。

朔也さんが発ったら、私ひとりではあの部屋にはいられない。離れるのは必然的だということだ。それなら、わざわざ傷つきに行くことはないんじゃないかと思う。

以前にも増して消極的になっている私に、七恵は真剣な声できっぱりと言う。


『投げやりになっちゃダメ、瑞香。はっきりしておかないと、もし次の恋愛をするとしても何かしら影響が出てくるわよ』

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