副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「あ……悪い」

「いいよ、気にしないで」


気を遣わせて申し訳なくなり、笑いながら軽く言った。

真面目な表情になるお兄ちゃんは、少し考えてから遠慮がちに口を開く。


「なぁ、そろそろ何があったか話せないか?」


……そうだよね、何も話さないままじゃお兄ちゃんも悶々としちゃうよね。朔也さんと離れてだいぶ気持ちも落ち着いてきたし、話してみようか。


「……なんか、信じられなくなっちゃったんだよね。朔也さんの気持ちが」


結論から切り出し、彼を疑って逃げてきてしまった要因を話し始めた。

会社の女性と親密そうに歩いていたこと、海外出張の件を教えてもらえなかったこと、私に迫っていたのは話題作りのためかもしれないということ……。

すべて吐き出すと、私は深いため息をついた。

黙って聞いていたお兄ちゃんは、眉間にシワを寄せて難しそうな顔をしている。


「なるほどね、それで逃げ帰ってきたのか」

「うん……」

「もし、本当に二股かけてたんなら、マジで殴り込みに行ってやりたいとこだけど。……俺は、やっぱり朔也さんはそういうことしない人だと思うんだよなぁ」


腕を組み、ため息混じりに言う彼に目を向けると、「俺が言っても説得力ないけどさ」と苦笑を浮かべる。

< 222 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop