副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「高校の時も、あの朔也さんだからそりゃもうモテまくってて。でも、彼女ができても、浮気したとかいう話はひとつも出なかったぞ。硬派なんだよ、あの人は」


力説するお兄ちゃんだけど、その女性付き合いが昔と今とでは変わっていたって不思議じゃない。

私は何度目かのため息をつきながら脱力した。


「ほんと説得力ない……」

「こら」


ムッとした彼は、しばらくして何かを思い出したらしく、クスッと笑う。


「そういえば、可愛い子連れてたから彼女だと思って冷やかしてたら、実は妹だったってことがあったな」


えっ、妹?

朔也さんからそんな話は聞いたことがない。私は目を点にして尋ねる。


「朔也さんって妹がいるの?」

「あぁ、なんか父親が違うらしいけどね。五歳くらい下じゃなかったかな。あの人、あんまり自分の家族の話とかしないから、詳しくは知らないけど」


そういえば、朔也さんのご両親は離婚して、父親のほうについていったのだと言っていた。

半分血の繋がった異父兄妹か……と考えていると、お兄ちゃんは真面目な調子でこんなことを言う。


「もしかしたら、瑞香が見た女も妹だったりするかもよ?」

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