副社長とふたり暮らし=愛育される日々
……あぁ、そうか。お兄ちゃんは、自分が“この人なら信頼できる”と思ったから、保証人にもなったし、朔也さんにサンタクロース役をお願いしたんだ。

このお人よしな彼も、決してなんでもかんでも人を信用しているわけではない。すべて自分を信じた結果なのだ。

そんな、当然と言えば当然のことを考えて納得していると、お兄ちゃんはまっすぐこちらを見つめてくる。


「瑞香は、瑞香の気持ちを信じればいい。自分はどうしたいかが、一番大事だと思うよ」


その言葉が、胸に響く。

ぽんぽんと肩を叩かれ、優しい笑みを残してお兄ちゃんが腰を上げたあとも、私はしばらく物思いにふけっていた。


私は、相手の気持ちがどうだとか、信じた結果どうなるのかとか、そればっかり気にしていて、自分がどうしたいかを考えることはしなかった。

……いや、彼が私を本当に愛することなんてないと決めつけて、自分の気持ちから背いていただけ。

結局、彼を信じられず疑ってしまったのは、自分に自信がないことが大元の原因だったのかもしれない。


「ダメだなぁ、私……」


澄んだ空を見上げて口から漏れたのは、そんな否定的なものだったけれど、心は幾分かスッキリしていく気がした。


< 225 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop