副社長とふたり暮らし=愛育される日々
自分がどうしたいか。
その答えを出すのは容易く、翌日、ふくろうで働いている間もずっと自問自答していたけれど、答えは変わらなかった。
私は、朔也さんが好き。
私を好きだと言ってくれた彼を信じたい。
そのシンプルな想いは、どれだけ揺さぶってもブレなくて、これを信じようと決めると、呆気ないほど心にかかっていたもやが晴れていった。
朔也さんに会おう。勝手に部屋を出てしまったことを謝って、ちゃんと彼の話を聞こう。
もしも悪い結末が待っていたとしても、それは自分を信じた結果。賭けに負けたと思って、潔く諦めるんだ。
お兄ちゃんのおかげもあってようやく前向きになり、朔也さんが休みだろう土曜日の明日会いに行こうかな、と考えながら仕事を終えた。
そんな午後六時、八畳ほどのふくろうの休憩室で着替えを終えた時、コンコンとドアがノックされ、エプロンやマスクをつけたままの芳江さんが入ってきた。
「瑞香ちゃん、言い忘れてた! ちょっと見てもらいたいものがあるのよ~」
「見てもらいたいもの?」
なんだかウキウキした様子の彼女は、自分のロッカーを開けて何やら漁っている。
「ほかの皆には昨日見せたんだけどね」と言いながら取り出したのは、一冊のファッション雑誌。若い女性向けのものだ。