副社長とふたり暮らし=愛育される日々
八歳も年上の千紘(ちひろ)お兄ちゃんは、とても優しくて愛想も良く、妹の私から見てもイケメンの部類に入ると思う。年が離れていたせいか、私をすごく可愛がってくれて、私もお兄ちゃんのことは今も好きだ。

毎年、クリスマスと同じ私の誕生日には、こっそり枕元にプレゼントを置いてくれる。

幼い頃、お父さんたちがしてくれていたことを、お兄ちゃんが引き継いだからなのだけど、私が二十四歳になった去年もまだ同じことを実行していたのだから感心する。

まぁ、サンタさんが来てくれた!と、気づかないフリをしてしまう私も私だけど。彼があまりにも気合いを入れてくれるから、つき合ってあげたほうがいいかなと思って。

……そう、お兄ちゃんのおかげで、私は彼氏なんていなくても、それなりに楽しい日を過ごしていたのだ。……去年までは。


「去年までは特に思いませんでしたけど……今年はちょっと寂しくなるかもなぁ」


独り言のように呟くと、芳江さんは聞き取れなかったのか意味がわからないのか、ハテナマークを浮かべて首をかしげる。

いけない、お兄ちゃんのことは七恵以外には話していないんだった。話しても、どうしようもないから。

私はマスクの下であはっと笑い、詳しく詮索されないうちに話題を変える。


「芳江さんの娘さんは、やっぱり彼氏とデートですか?」

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