副社長とふたり暮らし＝愛育される日々
「じゃあ、どうして今まで言ってくれなかったんですか？」


疑問を口にすると、朔也さんは少し気まずそうに笑って目を逸らし、珍しく弱気な声で言う。


「十年も前の、当時は高校生だった子をずっと想ってたなんて、気持ち悪がられるかもしれないだろ」

「そんなことありません！　だって、それを知った今、もっと朔也さんのことが好きになってるから」


彼の気持ちを聞いた瞬間、思わずそう叫んでいた。

面食らったように押し黙る朔也さんに、私は勢いを弱め、でもしっかりと気持ちを伝える。


「バレンタイン前から、好きだって自覚してました。でも、いろんなことが気になって、告白するのをためらっちゃって……」


海都くんが言っていたこと、三嶋さんのこと。いろいろな不安は、はっきり聞いて解消してしまえばよかった。

朔也さんが好きだという気持ちは揺らぎようがないのだから、ちゃんと告白していればよかった。

自信がなくて、傷つくのを恐れてばかりの弱虫な自分が嫌い。今さら後悔して、悔しさで瞳に涙が滲む。


「もう遅いですか？　もう、私のことは好きじゃないですか？」


視界を揺らして、朔也さんを見上げて問いかける。

彼の顔がほんの少し切なげに歪んだように見えた瞬間、手を引かれ、強く、しっかりと抱きしめられた。

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