副社長とふたり暮らし=愛育される日々
久しぶりに感じる彼の香りと温かさに、一瞬で心が落ち着いていく。


「そんなわけないだろ。嫌いになれるわけがない」


力強くも優しい声が頭の上から降り注ぎ、涙がぽろりとこぼれ落ちた。

どうして信じられなかったんだろうと思うくらい、朔也さんの腕の中はとても安心する。

広い背中を抱きしめ返し、目を閉じて彼の存在を感じていると、申し訳なさそうな声が聞こえてくる。


「本当に悪かった。瑞香があんなふうに悩んでたとは思わなくて。……戻ってきてくれてよかった」


安堵のため息を漏らす朔也さんに、悪いのは私のほうだと言うように首を横に振った。

少し身体を離した彼は、「弁明させてくれるか?」と言い、頷いた私を応接スペースのソファへと促す。仕事中に申し訳ないと思いながらも、不安をなくしたい気持ちのほうが勝ってしまい、おとなしく腰を下ろした。

私の隣に座った朔也さんは、さっそく話を切り出す。


「まず彩音のことだが、あいつは父親が違う俺の妹だ」


やっぱり、お兄ちゃんが言った通りだったんだ……。

本人の口から聞いて確信すると、はやとちりしてしまったことにものすごく罪悪感が湧いてきて、肩をすくめる。


「お兄ちゃんから聞きました。本当にごめんなさい、疑って……」

「誤解されても仕方ないな。あいつ、昔から俺にくっついてて、今でも甘えてくるから」

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