副社長とふたり暮らし=愛育される日々
苦笑する朔也さんに、私はぎこちなく笑って「へー」と頷いていた。

あのクールな三嶋さんが、実はお兄ちゃん大好きっ子だっただなんて……意外すぎる。

あの時の甘えっぷりを実は見てましたと暴露したら、三嶋さんはどんな反応をするだろう。と、少々意地悪なことを考える間にも、朔也さんは話を続ける。


「彩音が、周りに俺と兄妹だって知られると面倒だって言うから、誰にも言わないようにしてたんだ。それが常だったから、ついお前にも言い忘れてて……本当にごめん」

「いえ、いいんです! 恋愛関係じゃないってわかっただけで」


頭を下げて謝る彼に、私は慌てて手を振った。

かなり悩まされたけど、それも私がちゃんと聞けばよかっただけのこと。朔也さんは悪くない。

姿勢を元に戻した彼は、私がふたりを目撃した時の事情を教えてくれる。


「あの日は、俺が海外出張に行くってことを知った彩音の両親に、一緒に食事しようって誘われてたんだよ」

「あぁ、そうだったんですか。仲いいんですね」

「彩音の父親が気さくな人でね。何年もかけて、俺の親父ともいい関係を築いてくれた。今じゃ家族ぐるみで付き合う仲だよ」


それってすごいことだよね。社長からすれば、別れた妻の新たな家族と仲良くしているということなのだから。

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