副社長とふたり暮らし=愛育される日々
それぞれの道=明るい未来のため
すでに桜も散り始めた、四月中旬。私は初めて訪れた、成田国際空港のロビーにいる。
とても広くて綺麗な空港内に感激する余裕はあまりなく、トランクケースを預けて朔也さんがこちらに来るのを待っている。
「本当によかったの? ついていかなくて」
ほんの少し心配そうに聞いてくるのは、たまたま休みで一緒に見送りに来てくれた七恵だ。
そう、これから朔也さんはニューヨークへと旅立つ。
初めて結ばれたあの夜、彼は『一緒に来るか?』と誘ってくれて、とてもとても嬉しかった。けれど、私は日本に残ることに決めたのだ。
「私はこっちで頑張るの。朔也さんが戻ってくる頃には、もっとモデルとして胸を張れてるように」
もっと自分に自信をつけて、魅力的なモデルになって、彼に釣り合うような女になりたい。そのための私の舞台は、今いるここだから。
強い意志を胸に抱き、笑顔で言い切ると、七恵も安心したように微笑んで頷いた。
朔也さんも、誘ってはくれたけれど、私が残ることを選ぶのはわかりきっていたようで。『りらが日本一のモデルになることを期待してるよ』と、心から応援してくれていた。
あと……『離れるまで、毎日抱いてやる』と宣言され、本当にその通りに……って今思い出すな!
つい昨夜も見た、官能的な彼の表情や声がまざまざと蘇ってきてしまい、慌てて振り払う。