副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「海都くん!」

「久しぶりー。誰かの見送り? 俺はこれからニューヨーク行くんだけど」

「奇遇だな、俺もだ」


ニコニコして近づいてきた海都くんは、割り込む朔也さんを見上げ、「げっ」と声を漏らした。一変する表情はなんと正直なことか。

バレンタインのあと、仕事で会った時に、朔也さんとちゃんと恋人になったことを報告していた。

海都くんは残念がっていたけれど、私を揺さぶるために話題作りという疑惑を持たせたことを、ちゃんと謝ってくれたのだった。

朔也さんいわく、発表会で私の話をしたのは、『Mimiの良さをアピールするために、説得力のある経験談を話しただけ』なのだそう。

おかげでプランタンアムールも売上は好調のようだし、私たちはすっかり社内で公認の仲となっている。明智さんが懸念していた社員からの不満も出ることはなく、結果良ければすべて良し、といった感じだ。


元ライバルのふたりは、お互いの仕事の話を軽くしたあと、朔也さんが少しだけ不機嫌そうな表情になって忠告する。


「わかってるとは思うが、俺がいない間、りらに手出すなよ?」

「さぁどうかな、欲しくなっちゃうかもしれません」


エンジェルスマイルを浮かべてさらりと言う彼に、朔也さんも、私たち女性陣も口の端を引きつらせた。

冗談だとわかってはいるけど、もう事をややこしくしないでほしい……。

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