副社長とふたり暮らし=愛育される日々
ふくろうでの勤務は日勤と遅番があるシフト制で、日勤の時は朝八時から午後五時までだ。
クリスマスを迎えた今日は日勤。定時に仕事を終えて外に出ると、雪に変わりそうな冷たい雨がしとしとと降っていた。
道行くカップルは、こんな天気でも相合い傘をして幸せそう。というか、街中が浮足立っているように見える。
大きなプレゼントを抱えた人や、サンタクロースのコスプレをしてケーキを売る人たちを横目に、私は最寄り駅に向かった。
電車を一回乗り継ぎ、三十分ほどで着くベッドタウンに私の自宅がある。いつもはまっすぐ帰るけれど、今日はどうしようか迷いつつ、電車を降りると駅前の洋菓子店に入った。
“しずく堂”という、昔からある小さなこのお店で、家族の誕生日には必ずケーキを買っていた。もちろん、お兄ちゃんも毎年ここで買ってきてくれる。
しずく堂に寄ったのは、きっと今日もお兄ちゃんは帰ってこないだろうと予想して、自分でケーキを買うため。
でも、種類の違うケーキを二個買ったのは、もしかしたら今日は帰ってきてくれるかもしれない、という淡い期待が消えていないからだ。
矛盾した気持ちを抱きながら、右手に傘を持ち、左手には小さな白い箱をぶら下げて、少し強くなってきた雨の中を歩く。
……十分ほどで着いた家の中は暗いままで、いつもの風景と何も変わらなかった。