副社長とふたり暮らし=愛育される日々
そんな中、ひとり状況を把握しきれていないお兄ちゃんが、困惑した様子で海都くんに詰め寄る。


「え、もしかして、君も瑞香のことを……!?」

「はい、特別気に入ってますよ。だって、俺を見て落ちなかった人は初めてだから」


キラキラの笑顔で、彼はなんだかすごいことを口にした。

そういえば、“宝生海都を前にすれば、誰もが恋に落ちる”と言われているんだっけ?

たしかに、私は落ちなかったわけだけど、まさかそれがきっかけで好意を寄せてくるようになったとは……。


「……この子、本格的に小悪魔キャラに転身したね」


こそっと囁く七恵に、脱力しかける私は激しく頷いた。

そんなひと言は聞こえていないだろう海都くんは、さっぱりとした表情で言う。


「でも、いろいろやりましたけど、彼女の心は動かなかったみたいなので。潔く諦めます」


再びサングラスをかけた彼は、「じゃあ、俺はお先に」と、朔也さんに軽く頭を下げる。そして、歩き出しながら私のほうを振り返った。


「りらさん、また撮影で」

「あ、うん、またね!」


口角を上げてひらひらと手を振り、ゲートのほうへと向かっていく彼を見送っていると、朔也さんがボソッと呟く。


「……心配だ」

「大丈夫。もう惑わされませんから」


私は軽く笑い、安心させるようにそう言った。

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