副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「ブロンド美女になびかないでくださいね」

「興味ない。瑞香以外は」


迷いなく答えてくれる唇も、ぎゅっと抱きしめる力を強める腕も、この人のすべてが好き。大好きだ。

その気持ちだけは我慢せずに溢れさせていると、朔也さんは身体を離すことなく私の手だけを取る。


「お前にも、変な虫が寄りつかないように……」


彼がよくわからないことを言うと同時に、取られた左手に違和感を覚える。不思議に思いながら手を見下ろして、一瞬息が止まった。

左手の薬指に、小さな花を象った透明な石がキラキラと輝いている。


「そこ、予約しとく」


目を見開く私に、麗しい笑みを向けた彼は、それだけ言うと踵を返す。

うそ……これって、この意味って……。

胸が高鳴り、シルバーのリングで独占された手が震える。私が呆然としている間にも、朔也さんの背中が遠ざかっていってしまう。

努力も虚しくこぼれ落ちた涙を拭い、魔法が解けたように私の足は勝手に動き出し、彼を追いかけた。


「朔也さん!」


振り向いた彼の腕にしがみつき、背伸びをして唇を寄せ……初めて自分からキスをした。

驚く朔也さんを潤んだ瞳で見つめ、笑顔でひと言告げる。


「待ってます」


彼は愛おしそうに表情をほころばせ、私の頭を支えて短めのキスを落とした。

あなたの帰りと、幸せな未来を待ちながら、私も頑張るから。安心していってらっしゃい──。




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