副社長とふたり暮らし=愛育される日々
ずっと、俺のそばで=愛育する日々
今年も、そろそろ沈丁花が香る季節がやってくる。といっても、ここニューヨークではその花を楽しむことはできないが。
今頃、日本は夜中か。久しく会っていない大切な人は、今何をしているだろうかと思いを馳せながら、機内の座席に座り、雑誌を開いた。
見開きのページに、以前よりも明るく笑っている愛らしい姿が載っている。そこにあるのは、“人気モデル・りらの素顔”という文字。
「素顔を知ってるのは俺だけだって」
つい独り言をこぼしてしまった。通路を挟んで隣の席に座る白人の中年女性が怪訝そうにこちらを見るが、気にせず恋人を見つめ続ける。
俺が日本を離れてから一年弱、瑞香はすっかりモデルが板についてきた。Mimiだけでなく、いろいろな商品のプロモーションを行っている。
手を離れたようで、少しの寂しさもあるが、頑張っている彼女を見ることができるのはやはり嬉しく、その輝く姿に感慨深い気持ちになる。
記事の文字を追うと、瑞香の好きなものやプライベートなことについて書かれている。
“今、恋をしてる?”という質問には、もちろんYESと答えている……が。
「“とってもカッコイイんだけど、猫好きな可愛い一面もある人です”……って、それは言うなよ」
またつっこんでしまい、白人のマダムがいよいよ俺を警戒し始めたように見えた。