副社長とふたり暮らし=愛育される日々
しかし、あとに続く“彼のおかげで、たくさんのことを教えてもらえたし、自分に自信が持てたんです。とても感謝しています”という言葉に、心が温かくさせられる。

どれも愛おしい彼女の記事を読み進めていくと、Mimiの香水について語っている部分に突入した。


“例えば自分を変えたい時や、元気を出したい時、そうなるように願って香水をひと振りするんです。私にとって、Mimiをつけることは、おまじないをかけることと同じなのかも”


その文を見て、思わず口元が緩んだ。

おまじない、か。そういえば、あいつと初めてまともに話した時、撮影がうまくいくように、『目の前の男を好きになる』なんてことを言ったっけ。

なぜ、おまじないなんて子供じみたことを言ったのか。それはおそらく、祖父母が関係している。

昔、何か大事な行事がある時には、ふたりはよく俺に『うまくいくおまじないだよ』と言って、手を握ってポジティブな言葉を念じるようにかけてくれた。

両親より祖父母といる時間が多かったため、彼らから受けた影響は大きくて。いまだに幼い頃の記憶が残っていたせいなのだろうと、今さらながらわかった。


今日、これからあいつは大役を任されているから、きっと緊張することだろう。

またおまじないをかけてやろうか。

上空からの美しい景色を眺めながら、そんなことを考えていた。


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