副社長とふたり暮らし=愛育される日々
以前帰ってきたのは夏だった。
本社に顔を出し、彩音や家族と食事をして、もちろん瑞香とも甘いひと時を過ごした。
あの時はあまりゆっくりできず、皆残念がっていたが、今日からはまた日本での生活に戻れる。
マンションは『好きな時に出入りしていい』と瑞香に任せているから、きっと綺麗なまま保たれていることだろう。
昼時の空港に降り立ち、トランクケースを持ってロビーに向かうと、見慣れた人物が俺を待ち構えていた。
「お帰りなさいませ、副社長」
以前とまったく変わらない出で立ちで、綺麗に一礼する明智だが、その無愛想な顔が嬉しそうに見えるのは、俺の自惚れだろうか。
俺もホームに帰ってきたような安堵感を抱きながら、笑みを湛えて彼に近づく。
「明智、変わりないか?」
「相変わらずです。が、専務が大雑把すぎるので、早く副社長に帰ってきていただきたかったです」
歯に衣を着せぬ物言いをする彼に、思わず笑ってしまった。正直で、俺にもほかの重役相手にも気後れしない明智らしい。
「帰ってきただろ、予定より何ヶ月も早く」
「えぇ、さすがですね」
得意げに言うと、明智の口角もクッと上がった。