副社長とふたり暮らし=愛育される日々
離れている間に心に空いた寂しさを埋めるように、ゆっくり彼女に近づいていく。


「緊張してるだろ」

「……してます、いろんな意味で」


頬を薄紅色に染め、照れているようにはにかんで俺を見上げる彼女は、愛しさを上限なく膨れさせる。

昔の繋がりがあってもなくても、俺はきっとこの子を好きになっていただろうと、なんの根拠もないが自信を持てるんだ。

早くその肌に触れたいと逸る気持ちを抑え、落ち着いた声で言う。


「おまじない、かけてやろうかと思って」


沈丁花の香水を作ることを反対された時、自分で策を見つけてチームメンバーを説得するくらい、瑞香は意外と度胸がある。

実はあの時、手助けしてやろうかと密かにミーティングルームの様子を窺っていたが、そんなものは必要なく、感心していたのだ。

そんな彼女だから心配はいらないだろう。これから言うことは、勇気づけてやるためだけじゃなく、幸せな未来を実現させるための宣言だ。

細い左手を取り、日本を発つ時にあげた指輪を今も嵌めてくれている薬指に、そっとキスを落とす。


「俺がそばにいる。どんな時も、瑞香を支えるから」


みるみる潤んでいく瞳を真剣な眼差しで見つめ、柔らかく微笑んだ。

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