副社長とふたり暮らし=愛育される日々
もしかして、あまりにも私がダサいから、ここの素敵な服を買い与えるつもり? しかも、副社長好みの服を!?


「そ、そんなのダメですって!」

「気にするな。服代なら俺が──」

「店員さんにゆるキャラトレーナーを見られちゃうかもしれないじゃないですか!」

「そっちかよ」


脱力する副社長だけど、私には死活問題だ。この格好で足を踏み入れるのもためらうのに!

しかし、愕然としている私の腕を軽く掴んだ副社長は、「そのゆるキャラも可愛いから平気だ」と適当なことを言って一歩を踏み出す。そのまま、ずるずるとショップの中へ引き込まれてしまった。


あぁ、入ってしまった……。ラグジュアリーな雰囲気の店内も、オシャレな格好をした店員さんも眩しい……。

ここはどうやらセレクトショップらしく、一階は靴やバッグ、アクセサリーが綺麗に並べられている。副社長に連れられてきた二階がレディース、三階がメンズになっているようだ。

二階のフロアを歩くと、女性客がちらちらと副社長を見ていて、うっすら頬を染める人もいる。私の存在には気づかないでほしいから、彼だけを見ていていただいて構わないのだけど。

当の副社長は、そんな視線をまったく気にすることなくレディースの服を見て回り、時々目を引くものがあると、私にそれをあてがいながら言う。

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