副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「ここの商品は海外からの一点ものが中心なんだ。“りら”だとこういう派手なやつも似合うと思うんだが……」


真っ赤なドレスワンピは今の私にはいまいちだったらしく、彼は首をひねっている。されるがままの私は、なんだか着せ替え人形になったみたいで、不思議な気分。

すると、ある服を手に取った彼は、私にあてがう前から満足げな顔を見せた。


「瑞香にはこれだな」


納得したように頷く彼があてがったのは、パールグレーの色合いが上品な、長袖のミモレ丈ワンピース。

ひらりと揺れるスカートの裾は、アシンメトリーで後ろがやや長くなっていて。ハイウエストに黒いリボンが巻かれている、女らしく優雅なデザインのものだ。

自分ではまず選ばない、エレガントなそれを見下ろし、私は目をしばたたかせる。


「こんな女らしいデザインのワンピース、私に似合いますかね……」


りらの時は、どちらかと言えば可愛くカジュアルなファッションが多いから、こういう大人っぽい服はあまりチャレンジしたことがない。

少々意地悪っぽい表情を見せる副社長は、「モデルなら着こなしてみろ」とちょっぴり厳しいことを言い、うっと押し黙る私を試着室へと促す。

ちょうどこちらにやってきたにこやかな女性店員さんにも案内されて、私はワンピースとともに試着室のカーテンの中に入った。

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