副社長とふたり暮らし=愛育される日々

食事を終えて、再び副社長の車に乗り込み、家まで送ってもらった。

結局、ほかには何も教えてもらえなかったけれど、もう曖昧なままでもいいか、なんて思う。そのほうが夢心地のままでいられそうだし、こんなことはきっと今日だけだし。

さっきと同じ位置に車が停まると、シートベルトを外した私は、運転席のほうを向いて頭を下げた。


「今日は本当にありがとうございました。美味しい食事をご馳走してもらって、こんなに素敵な服も買ってもらっちゃって……」

「俺が勝手にしたことだから気にするな。今さらだが、迷惑じゃなかったか?」


急にわずかに不安の色を滲ませるものだから、私は少し驚きつつ、ぶんぶんと手と首を振る。


「迷惑だなんて全然! すごく楽しかったし、嬉しかったです。最初は何か企んでるんじゃないかと思いましたけど……」

「それは仕方ない」


あっさりと認める彼に笑いながら、私はもう一度お礼を言った。

「玄関まで送る」という副社長の言葉に甘えて、ふたりで車を下りることにすると、助手席に回った彼が傘を差してくれる。さっきからそうなのだけど、こんなふうに気遣ってもらえると、本当にお姫様になったみたい。

でも、これで夢のような時間は終わり。もうシンデレラの魔法は解けるんだ。

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