副社長とふたり暮らし=愛育される日々
問題提議をしようとしたそばからきっぱりと否定された。
そうだよね、副社長は見境なく手を出すようなことをする人じゃないよね。
それはわかる。わかっていますけど、やっぱり抵抗はある!
うーんと唸って葛藤していると、副社長は整った眉をわずかにひそめ、心配そうな声をこぼす。
「寒くて心細い思いするだろうに、ひとりにしておけるか」
そのひと言が、じんわりと心に染みていく。
「それに」と続ける彼は、廊下の先にあるキッチンのほうを指差し、口角を上げて明るめの口調でこう言った。
「ケーキ、お前ひとりで食べ切れないだろ」
「あ……」
そういえば、さっき冷蔵庫にしまったんだった。ふたつの箱を。
冬だから、冷蔵庫を使えなくてもすぐに悪くなることはないだろうし、今日全部食べてしまわなければいけないわけではない。けれど、副社長はきっと、私が少しでも来やすくなるように言ってくれているんだろう。
その気持ちも嬉しいし、正直、甘えてしまいたい。この人の温かい優しさに、もう少しだけ触れていたい──。
天秤が傾いた私は、遠慮がちに彼を見上げ、意を決して口を開く。
「……一緒に、ケーキ食べてくれますか?」
私の気持ちを汲み取ったらしい副社長は、ふっと微笑み、「お安い御用だ」と答えた。
シンデレラの魔法は、図らずもまだ解けないみたいだ。
それでも長く続くわけはないと、この時の私は思っていた。
そうだよね、副社長は見境なく手を出すようなことをする人じゃないよね。
それはわかる。わかっていますけど、やっぱり抵抗はある!
うーんと唸って葛藤していると、副社長は整った眉をわずかにひそめ、心配そうな声をこぼす。
「寒くて心細い思いするだろうに、ひとりにしておけるか」
そのひと言が、じんわりと心に染みていく。
「それに」と続ける彼は、廊下の先にあるキッチンのほうを指差し、口角を上げて明るめの口調でこう言った。
「ケーキ、お前ひとりで食べ切れないだろ」
「あ……」
そういえば、さっき冷蔵庫にしまったんだった。ふたつの箱を。
冬だから、冷蔵庫を使えなくてもすぐに悪くなることはないだろうし、今日全部食べてしまわなければいけないわけではない。けれど、副社長はきっと、私が少しでも来やすくなるように言ってくれているんだろう。
その気持ちも嬉しいし、正直、甘えてしまいたい。この人の温かい優しさに、もう少しだけ触れていたい──。
天秤が傾いた私は、遠慮がちに彼を見上げ、意を決して口を開く。
「……一緒に、ケーキ食べてくれますか?」
私の気持ちを汲み取ったらしい副社長は、ふっと微笑み、「お安い御用だ」と答えた。
シンデレラの魔法は、図らずもまだ解けないみたいだ。
それでも長く続くわけはないと、この時の私は思っていた。