副社長とふたり暮らし=愛育される日々
解けない魔法=ふたりで朝まで
とりあえず一日泊まるのに必要なものを大きめのバッグに詰め、ケーキを持って、再び家をあとにした。
電力会社には明日の朝連絡することに。たまたま明日の仕事が休みでよかった。
さっきよりも緊張しながら、副社長の車に揺られること数十分。着いたのは新宿駅に近い、二十八階建てのタワーマンションだった。
地下にある駐車場に車を停め、エントランスに入る前に、雨が止んだ夜空にそびえるそれを見上げ、私はあんぐりと口を開ける。
「こっ……こんなところにお住まいなんですか……!」
「あぁ、俺の部屋は二十五階だ」
さらっと言う彼は、私の荷物を持ちながらさっさと歩きだす。私も慌ててあとに続くけれど、コンシェルジュが常駐している、ホテルと見紛うようなロビーにも驚きっぱなしだ。
ここ、家賃いくらなんだろう……私の月給なんて軽く越えているに違いない。
こんな、いろんな意味でお高いところに住んでいるなんて、恐るべし副社長様……!
なんだかクラクラしつつエレベーターに乗り、二十五階を目指す。
彼の部屋の黒いドアの前にたどり着き、おずおずと中へ入らせてもらうと、廊下の先は広々としたリビングダイニングとなっていた。
白いフローリングに白い壁、そこにモダンな家具が置かれて、落ち着いた大人の空間が広がっている。