副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「あー! この果物いっぱい乗ったショートケーキ、買おうか迷って結局高かったからやめたんですよ」

「さすが、堅実だな」


クスッと笑った彼は、カラフルなフルーツがこぼれそうなほど乗ったケーキを、私のお皿に取ってくれた。

副社長はチョコレートの上に金箔が散りばめられたオペラを選ぶと、いつの間にお湯を沸かしていたのか、コーヒーまで淹れてくれる。至れり尽くせりな彼に感心し、もちろん感謝もしながら、ふたり並んでソファに座って食べ始めた。

とっても美味しいケーキを味わいながら、明日のことについて話し合う。


「俺は明日会社に行く予定だから、一緒に出ればいい。家まで送るから」

「大丈夫ですよ、電車で帰れますから! 時間かかっちゃうし、私のことは気にしないでください」


さすがにそこまでしてもらうのは悪いから、しっかりとお断りした。

それにしても、副社長は日曜でも会社に行かなければいけないのか。


「明日も仕事なんですか?」

「たいした用件じゃないけどな。日曜はあんまり電話かかってこないから、仕事がはかどるんだよ」


わずかに笑みを漏らし、ブラックコーヒーに口をつける彼を見ながら、私はなるほどと頷いた。

やっぱり大変なんだなと思いつつ、苺にフォークを刺していると、副社長は真剣な声で言う。

< 62 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop