副社長とふたり暮らし=愛育される日々
『あ……あ、あほんだら!?』

「こっちは誕生日どころじゃない事態に陥ってんの! 今日こそは帰ってくるかもって思ったのに、どこで何してるのよ!?」


息継ぎもせず、早口で一気にぶちまけると、電話の向こうは誰もいないかと思うくらい静かになった。

はぁ、と息を吐いて一旦落ち着くと、いきなり怒りすぎたか……と反省する。しかも、お兄ちゃんに対してこんなに声を荒げたのは初めてかもしれない。

気まずくなって、私は頭をポリポリと掻きつつ勢いを弱める。


「あ……お兄ちゃんごめん、つい」

『いや、いいんだ……。愛する妹に初めて罵声を浴びせられたことくらい、このくらい、なんとも……』


瀕死の痛手を負ったかのように声を震わせる彼。うなだれた額に手をあてて、うちひしがれている様子が想像できて、ちょっと笑える。

なんとかショックを堪えたらしい兄は、ひとつ息を吐き、平静を取り戻して言う。


『お前の言う通り、早く帰らない俺が悪い。本当にごめん。……ていうか、誕生日どころじゃない事態ってなんだ? 大丈夫なのか!?』


今度は慌て始める忙しない彼に、私は少し笑いをこぼしつつ答える。


「うん、とりあえず。優しくて頼れる、ちょっと変わったサンタさんのおかげでね」

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