副社長とふたり暮らし=愛育される日々
副社長を待たせているということもあり、私はさっさとバスルームを出た。

家から持ってきた、一番暖かくてお気に入りのルームウェアに着替え、タオルで髪を拭きながらリビングに戻る。

ソファに深く腰掛けて足を組み、テレビのニュースを見ている副社長。くつろいでいるだけなのに、なぜこの人は色気があるんだと感服しつつ、声をかける。


「お先にいただきました」

「あぁ、早かったな…………ん?」


テレビからこちらに目を向けた彼はそのまま止まり、私をじっと凝視する。

な、何? すっぴんだから?

でも、さっきもほぼすっぴんだったしな……と考えていると、おもむろに腰を上げた副社長が、対面式キッチンのカウンターのそばにいる私に近づいてくる。


「これは……」


ぼそっと呟き、手を伸ばした彼が触れたのは、私の首のうしろにあるフード。もこもこのそれには、ふたつの三角の耳がついている。

もしかして、これが気になったの?


「あ、これあったかくてお気に入りなんです。こうすると猫になるんですよ」


「ほら」と言って猫耳フードを被り、にこりと笑ってみせる。しかし、副社長は真顔のまま。

あれ、何か反応してくれるかと思ったのに。

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