副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「まぁ、まったく恋愛する気ないあんたに比べたら、私のほうが上かもね」


したり顔をする七恵お姉様が鏡越しに見え、私は「ごもっともです」と深く頷いた。

七恵はそれなりに恋愛経験があるし、今も年上の彼氏と仲良くやっている。それに比べ、私はこの二十四年間、彼氏と呼べる存在ができたことがない。

学生時代から地味な外見で、性格もどちらかと言えばクールな私は、男子の目には可愛い女子とは映らなかったことだろう。と言っても、モテたいわけではなかったし、自分を変える気もなかった。

そのスタンスは今も継続中だけれど、恋愛する気がないというより、その仕方を忘れてしまったというほうが正しいかもしれない。


「瑞香はもったいないよ。スタイル良くて顔立ちだって綺麗なのに、普段が飾らなさすぎるんだもん」


七恵は私の両肩にぽんっと手を置き、鏡を見ながら不満げに言った。

優しいから“飾らない”とやんわり言ってくれているけど、要は地味だということだ。

普段はほぼすっぴんのナチュラルメイクの私は、つけまつげをつけ、濃いめのアイシャドウを施した今の姿とはまるで別人。本職も、あまり人前に出ないお惣菜屋の調理の仕事で、それが終われば家に帰るだけの生活をしている。

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