副社長とふたり暮らし=愛育される日々
●Love nest2●
似非プロポーズ=同居のお誘い
寝心地の良いベッドで目を覚ました時、カーテンの隙間からは光の筋が伸びていた。
寝ぼけ眼で枕元に置いたスマホを見ると、七時にセットしたアラームが鳴る三分前。朝ご飯の用意をしなくちゃ。
昨日は結局、ベッドを借りる代わりに朝食を作らせてほしいと私が言い、なんとか落ち着いた。しかし、このベッドに染みついた副社長の香りのせいで、なかなか寝つけなかったのだ。……彼がすぐそばにいるようで。
羊……ではなく、もふもふの猫を数えているうちに、いつの間にかしっかり寝ちゃっていたみたいだけど、起きられてよかった。
毎朝凍るように寒いわが家では、布団から出るのに勇気がいるけど、この副社長の部屋はいつでも暖かい。
快適さに気分を良くしながら眼鏡をかけ、そっとドアを開けてリビングの中央のほうに進むと、ソファで毛布にくるまった彼はまだ寝息を立てていた。
長いまつげに縁取られた切れ長の瞳、スッと通った高い鼻、薄くも厚くもない形の良い唇。そのすべてのパーツが黄金比で配置されているような整った顔に、さらりとしたラフな髪の毛が降りかかっている。
改めてじっくり見てしまう。だって、寝顔もキレイすぎて。三十五歳には見えないや。
そうやって観察していると、彼の手がぴくりと動いて、寝返りを打とうとする。私は慌ててその場を離れ、キッチンへ向かった。