副社長とふたり暮らし＝愛育される日々
それから、私が作った朝食を、ダイニングテーブルに向かい合って座って食べた。

副社長は『すげぇ美味い』と言いながら、本当に美味しそうに食べてくれて、とっても嬉しかった。こうやって食事を振る舞ったのも、誰かと朝食を食べるのも久しぶりで、心が芯から温まった気がする。

落ち着いたところで電力会社に電話しようとすると、先に番号を調べていたらしい副社長がかけてくれた。本当にすべてにおいてお世話になりっぱなしで、頭が上がらない。

九時を過ぎた頃、マンションをあとにして駅まで送ってもらい、車を降りる間際に何度目かのお礼を言う。


「本当にありがとうございました。このお詫びは必ずしますから」

「どんなことをしてくれるのか、期待してるよ」


あぁっ……そう言われると悩む。猫ちゃんグッズにしようと思ったけど、果たして副社長様を満足させることができるものか……。

真剣に悩んでしまう私に、ハンドルに片手をかける彼は無邪気な笑顔を見せる。


「冗談だ。詫びなんて気にしなくていいから、まず家をなんとかしなさい」


優しい先生みたいに諭され、私も笑って「はい」と頷いた。

地上に降りた私に「気をつけて」とひと声かけ、副社長の車は走り出す。少しの寂しさと、日常に戻ることの空虚感みたいなものを感じながら、それを見送った。

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