副社長とふたり暮らし=愛育される日々
あっという間に一月が終わりに近づき、海都くんとの撮影の日が迫ってきた。
七恵に意味深なことを言われたおかげで、撮影前日である今日はなんだかそわそわしてしまう。
午後八時、少し遅めの夕飯を副社長と一緒に食べている今も、頭にはずっと明日のことがあって、なかなか会話に身が入らない。
そうして、もうすぐ食べ終わるという時、すでにお皿を空にしていた副社長が口を開いた。
「明日は、また宝生海都と撮影なんだってな」
今まさに考えていたことを言われ、心を見抜かれたみたいでドキリとする。
「はい。噂によると、絡みがあるらしいからちょっと不安なんですけどね」
その不安をごまかすように笑って言うと、グラスに口をつけた副社長が、一瞬ピクリと止まったように見えた。
けれど、些細な引っかかりは、静かにグラスを置いた彼が話し始めたことで、すぐに気にならなくなっていく。
「あの香水は、男女どちらでも使える香りだ。カップルならふたりで同じ香りを纏えるように、という目的がある。だから、プロモーションでも親密さを出したいんだろう」
事前の打ち合わせで、柴田さんからそのあたりは熱く語られたから知っているけれど、復習するようにふむふむと頷いて聞いていた。