joy to the world !

 申し訳なさそうに脚立の下に立つ上村くんに出来ることは、これ以上何もない。
 このリボンさえ仕上げてしまえば上がりだから、あとはシートを取り払ってもらって―――

「……ホントすげーホテルっすね……」

 と考えていたら、上村くんの声が聞こえた。
 まさかと振り向くと、視線は天井や壁にまで釘付けでぼんやりとしている。

「初めて来たの?」
「当たり前じゃないっすか。ビンボー大学生っすよ?前を通ったことしかないですよ」
「ロビーからすごいもんね」
「キラッキラしてて床も鏡みたいっつーか……でもレストラン階で見た女の人たちはギラギラしてたな」
「おいこら」
「目がいくのは仕方ないっすよ」

 連れてきてもらえてよかったーとか何とか言っているのを耳に流しながら、私は最後の仕上げにとりかかる。


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