謎解きソルフェージュ
牧教授の人物評価には、だから無欲、高潔、といった言葉がついてまわる。
身内意識の強い警察組織にとってはいわばOBであり、外部専門家の意見を求める際に真っ先に名があがるのが彼だといわれている。

鞠子にとって憧れの人物だ。

一星大学では、四年次にゼミが必修だ。志望理由を簡単に記した申請書を教務課に提出し、定員オーバーになったゼミはその後教授と面接が行なわれる。
不適格と判断された学生は第二志望に回されるのである。

牧教授のゼミは人気があり倍率も高い。
やはり面接となり、やや緊張しながら鞠子は研究室のドアをノックした。

初めて対面する牧教授は、元警察官とは思えないほど柔和な表情をした初老の人物だった。

ここでひとつの奇跡(と鞠子は信じている)が起きた。
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