謎解きソルフェージュ
法学部に進学し、卒業して、国家公務員I種試験を受けた動機が、いまだに自分でもうまく説明できない。

牧 紀明の影響なのか、それとも———

なろうと思えばなれるのだ、警察官に。そんな気などないくせに、それでも公務員試験を受けて合格した。


川瀬鞠子。
きみは、牧教授から仕事の手伝いを頼まれたと、信じこんでいる。

やれやれ、だ。
今日び、捜査資料なんて、写真だろうと文書だろうと、すべてデータで送れるというのに。

実際、牧教授は一度メールで送りつけてきたのだ。
そして、泉は協力を断った。
「気が向かない、この事件は」

川瀬鞠子。
牧教授が届けたかったのは、資料ではなく、きみだ。

使命感やら正義感を顔に張りつけ、身にまとい、重いアタッシュケースを引きずるようにやってきた、川瀬警部補の娘。

『うちにも小さな娘がいるから———』
その娘。

なんとも小柄で華奢で、まだ女性と呼ぶのもためらわれる、少女のような容貌の大学生。
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