謎解きソルフェージュ
そこまでするか、と内心牧教授に悪態を吐く。
こんな何も知らない、学生を、川瀬警部補の娘を差し向けてくる執念に、呆れるしかない。

その目論みに、うかうかと乗ってしまったわけだが。

「ちょっと待って」
つかんだ細い手首から、つたわってきた彼女の緊張。


川瀬鞠子。
今日は前ボタンのシャツワンピースを身につけていた。
身体からはふわりと石鹸の香り。初めて会ったときより、きっちりとメイクもして。

覚悟していたのだ。
本気で泉に身体を投げ出すつもりだった。

やれやれ、と思う。
あやうく手を伸ばしそうになった。
久しぶりに、あまりにも真っ直ぐなものを目にしたせいか。

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