謎解きソルフェージュ
卒論のテーマは、『犯罪心理における推計統計学の実効性について』だ。

進行状況を報告しつつ、文献を読んで考えたことなどを教授に話す。
するとすかさず、思いもよらなかった角度から、深く鋭く示唆が与えられるのだ。

ゼミの時間では他の学生も加わり、活発な討論になることもあるけれど。教授の見識には遠く及ばない。まさに大人と子どもほどの差がある。

こうして教授とふたりで対話できる空間と時間が、なんとも心地よい。

牧教授へ抱いているのは純粋な憧れと尊敬だが、研究室で教授と話をしたり手伝いをするのが好き、というのはやっぱり少々変わっているだろう。
父を早くに亡くしているから、おそらくはファザコンの傾向があるのだ。

そんな個人的な感情を教授に押しつけるわけにはいかないと、自戒する。
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